「A社、B社、C社……と何社からも借りていて、毎月の返済日に追われている。こんな状態でも借金の整理はできるのだろうか」——複数の金融機関やカード会社から借入のある方(いわゆる多重債務の状態)からは、こうしたご相談をよくいただきます。結論からお伝えすると、借入先が複数あっても任意整理はできます。むしろ任意整理は、借入先ごとに分けて整理を進められるため、多重債務の整理に向いた手続きの一つです。この記事では、複数社からの借入を任意整理で整理するときの基本的な考え方と、検討の際のポイントを順番に解説します。
そもそも任意整理とはどんな手続き?
任意整理は、裁判所を通さずに、債権者(お金を貸している側)と直接交渉して返済の負担を軽くしていく手続きです。具体的には、これから先に発生する利息(将来利息)のカットや、残った元金を3〜5年(36〜60回)程度に分割して返していく分割回数の見直しなどを目指します。自己破産のように財産を手放す必要は基本的になく、官報に載ることもないため、比較的取り組みやすい整理方法とされています。
複数社から借りていても任意整理はできる
借入先が1社であっても10社であっても、任意整理の基本的な進め方は変わりません。任意整理は、対象となる債権者を1社ずつ分けて交渉していく手続きだからです。たとえば消費者金融2社・クレジットカード3社の合計5社から借入がある場合、それぞれの会社ごとに残高や利率を確認し、1社ずつ将来利息のカットや分割の見直しを交渉していきます。「何社もあるから無理」ということはなく、社数が多いほど任意整理という枠組みが整理しやすいケースも少なくありません。
交渉は各債権者と個別に行う
任意整理では、複数の借入先がある場合でも、債権者1社ごとに分けて交渉します。将来利息をカットできるか、分割回数をどこまで延ばせるかは、それぞれの債権者の方針や、これまでの取引状況などによって変わります。そのため、A社では将来利息のカットに応じてもらえても、B社では応じてもらえない、といったように、すべての債権者で同じ結果になるとは限りません。交渉ごとである以上、結果は個別の事情によって異なり、特定の結果をお約束するものではない点にご注意ください。
1社ずつ交渉するメリット
債権者ごとに個別交渉できることは、多重債務の方にとって大きな利点になります。負担の大きい借入を優先して整理したり、整理の対象とする会社を選んだりと、家計の状況に合わせて柔軟に方針を組み立てられるからです。次の項目で、この「対象を選べる」という特徴をくわしく見ていきます。
整理する債権者は選べる
任意整理は、整理の対象とする債権者を選べる手続きです。すべての借入先をまとめて対象にすることもできますし、利率が高く負担の大きい一部の会社だけを選んで整理することもできます。たとえば「金利の高い消費者金融3社は任意整理し、低金利で残高の少ない銀行ローン1社はそのまま返済を続ける」といった組み合わせも可能です。どの債権者を対象にすると無理のない返済につながるかは、借入残高や利率、毎月の家計の状況によって変わります。
ただし、対象を選ぶときには注意点もあります。代表的なのが保証人の付いている借入です。保証人が付いている借入を任意整理の対象に含めると、保証人に対して返済の請求が及ぶ可能性があります。また、利用しているカードや口座が止まる場合もあります。どの債権者を選ぶかの考え方は、別の記事でもくわしく整理していますので、あわせてご覧ください。
複数社だと費用はどう変わる?
任意整理の費用は、債権者1社あたりで計算されることが多く、対象とする社数が増えると、その分だけ費用も積み上がる傾向があります。たとえば5社を整理する場合は、1社あたりの費用のおよそ5社分が目安になる、というイメージです。複数社を整理する場合は、整理によって軽くなる返済の負担と、かかる費用の総額とを見比べたうえで、どこまでを対象にするかを判断することが大切です。費用の内訳については別の記事でもくわしく解説していますので、あわせてご確認ください。
総返済原資で完済の見通しを判断する
複数社を整理するときに最も大事になるのが、「毎月いくらまでなら無理なく返済に回せるか」という視点です。これを総返済原資と呼びます。まず家計の収入から生活費を差し引き、毎月返済に充てられる金額を確認します。そのうえで、将来利息のカットや分割の見直しをしたあとの各社への返済額を合計し、その合計が総返済原資の範囲に収まるかどうかを見ていきます。
たとえば毎月返済に回せる額が6万円で、整理後の各社への返済額の合計が月5万5千円に収まる見込みであれば、任意整理で完済を目指せる目安が立つことになります。逆に、減額後の合計額が総返済原資を上回ってしまう場合は、対象とする社数を絞り直したり、別の手続きを検討したりする必要が出てきます。この「収まるかどうか」の見極めが、複数社の任意整理では特に重要になります。
「おまとめローン」とは何が違う?
複数社の借入を一本化する方法として、「おまとめローン」を思い浮かべる方も多いかもしれません。おまとめローンは、新たに1本の借入をして、それで既存の複数の借入を返済する仕組みです。毎月の返済先や返済日を1つにまとめられる利点はありますが、新たな借入である以上、債務の総額そのものが法的に減るわけではなく、引き続き利息も発生します。
一方の任意整理は、新たに借りるのではなく、これから先の将来利息のカットなどを債権者と交渉していく手続きです。返済先が複数のまま残ることもありますが、利息の負担を抑えながら元金の返済に集中しやすくなります。両者は目的も仕組みも異なるため、どちらが自分の状況に合うかは、借入の総額や利率、家計の状況をふまえて中立に検討することが大切です。
全社を対象にしても見通しが立たないときは?
すべての借入先を任意整理の対象にして将来利息をカットしても、それでも毎月の返済額が家計の総返済原資を上回ってしまう——そうしたケースもあります。その場合は、任意整理にこだわらず、個人再生や自己破産といったほかの手続きを検討する選択肢になりうることもあります。これらは元金そのものを大きく見直せる可能性がある手続きで、家計の状況によってはより現実的な解決につながることがあります。
どの手続きが適しているかは、債務の総額や内訳、毎月の収入、家計の個別事情によって一人ひとり異なります。任意整理が向いているのか、別の手続きを検討したほうがよいのかは、自己判断で決めず、専門家に状況をお伝えいただくことをおすすめします。
まずは無料相談で状況を確認
実際にどの債権者を対象にして、どのような整理方針が無理のないものになるかは、借入の内訳や毎月の収入、家計の事情によって一人ひとり異なります。「何社もあって自分では整理しきれない」「どこから手をつければいいかわからない」という段階でも問題ありません。複数社の借入でお悩みの場合は、まず無料相談で借入と家計の状況をお伺いしたうえで、無理のない見通しをご案内します。
ご相談にあたって
司法書士法人 福間事務所は認定司法書士が在籍し、債権者1社あたりの債務額が140万円以下の任意整理について代理権限の範囲内で対応します。1社あたり140万円を超える事案は司法書士の代理権限の範囲外となるため、無料相談で個別にご確認ください。減額後の返済額の概算や見通しも、無料相談で個別にご確認いただけます。
個人再生・自己破産は書類作成のサポートであり、代理人として対応するものではありません。
当事務所では債務整理に関する初回のご相談を無料で承っています。任意整理で将来利息のカットや分割回数の見直しができるかどうかは、債権者との交渉や個別の事情により異なり、特定の結果をお約束するものではありません。借入や家計の状況をお伺いしたうえで、ご相談者に合った手続きをご案内します。