「実家の不動産は兄が相続することになったのに、義務化のニュースを見て、自分にも登記の義務があるのではと不安になった」——こうしたご相談は少なくありません。相続登記が義務になったと聞くと、相続人全員が何かをしなければならないように感じてしまいますが、実際には、話し合いがまとまった後は不動産を取得した人が登記の義務を負う、というのが基本的な考え方です。ただし、それは遺産分割が成立していることが前提で、まだ決まっていない段階では立場が少し異なります。この記事では、遺産分割の前と後で立場がどう変わるのかを整理しながら、ご自身に義務があるのかを考えるための道すじをご案内します。あわせて、話し合いが進まないときの選択肢や、そのまま放置した場合に起こりやすいことについても触れます。「自分は相続しないから関係ない」と感じていても、遺産分割が成立するまでは立場がはっきりしないことがあります。だからこそ、今どの段階にいるのかを知っておくことに意味があります。不安のもとになっている点を一つずつほどいていけば、やるべきことは見えてきます。まずは、義務を負うのが誰なのかという基本から整理しましょう。

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登記の義務を負うのは「不動産を取得した人」

相続登記の申請義務は、相続によってその不動産の所有権を取得した相続人に対して生じるものとされています。遺産分割の話し合いによって、その不動産を兄が引き継ぐと決まったのであれば、その不動産について登記を申請する義務を負うのは、取得者である兄です。取得しなかった相続人が、その不動産について改めて本登記の義務を負うわけではない、と考えるのが一般的です。「相続人だから全員に等しく義務がある」という理解は、正確とはいえません。まずは、誰がその不動産を取得したのかという点が、義務の所在を考えるうえでの出発点になります。ただし、この整理は遺産分割が成立していることが前提になります。

遺産分割が成立する前は立場が異なる

注意したいのは、遺産分割がまだ成立していない段階です。話し合いがまとまるまでの間は、法律上、相続人が法定相続分に応じて不動産を共有している状態と扱われます。この段階では取得者がまだ確定しておらず、誰にどのような義務があるかの整理はケースによって異なるため、相続人それぞれが自分の立場を把握しておくと安心です。「自分は相続しないつもり」という気持ちがあっても、正式に遺産分割が成立するまでは、その意思だけで義務がなくなるわけではありません。つまり、兄に譲るという結論が家族の中で固まっていても、それを遺産分割として成立させて初めて、立場がはっきりする、ということです。まずは話し合いを成立させ、取得者を確定させることが、立場を明確にする第一歩になります。

期限内に成立しそうにないときの選択肢

遺産分割の話し合いに時間がかかり、相続登記の期限が気になる場合には、自分が相続人であることを法務局に申し出る相続人申告登記という簡易な手続きで、ひとまず登記の義務を果たしておく方法があります。これは原則として一人でも申し出ができ、他の相続人の同意を待たずに、自分の分の義務の不安を解消できるのが特徴です。取得しない見込みであっても、成立までの間の備えとして知っておくと安心です。分割が成立して兄が取得すれば、その後の本登記は取得者である兄が行うことになります。どの方法が適しているかは、他の財産の状況やご家族の意向によって変わります。

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そもそも一切を引き継ぎたくない場合

不動産に限らず、借金なども含めて、その相続そのものを一切引き継ぎたくないという場合には、家庭裁判所への相続放棄という手続きが選択肢になることがあります。相続放棄をすると、その相続については初めから相続人でなかったものとして扱われ、不動産の登記義務も生じません。ただし、プラスの財産も含めて引き継げなくなること、原則として相続の開始を知った時から一定の期間内に手続きをする必要があることなど、判断には注意すべき点があります。当事務所は、司法書士として相続放棄の申述書など裁判所へ提出する書類の作成をサポートします(代理人として手続きを行うものではありません)。

自分は取得しない場合でも確認しておきたいこと

取得しない立場であっても、遺産分割協議書に署名・押印を求められたり、戸籍などの書類の提供に協力を求められたりすることはあります。これは、兄が相続登記を進めるうえで、相続人全員の合意や書類が必要になるためです。必要な範囲で協力することが、結果的に手続き全体をスムーズにし、ご自身にとっての区切りにもつながります。ご自身にどこまでの関わりが必要か、判断に迷うときは、今どの段階にいるのかを含めて状況を一度整理してみることをおすすめします。

「自分は関係ない」と放置しないほうがよい理由

「不動産は兄が相続するのだから、自分は何もしなくてよい」と考えて、話し合いや書類の準備をそのままにしてしまうことがあります。しかし、遺産分割が正式に成立しないままだと、その不動産は相続人全員の共有という状態が続き、取得者を確定させることができません。時間が経つうちに、相続人のどなたかが亡くなって相続がさらに重なったり、認知症などで判断が難しくなったりすると、話し合いそのものを進めにくくなってしまいます。そうなると、本来は兄がスムーズに登記できたはずの手続きが、かえって複雑で時間のかかるものになりかねません。自分が取得しない立場であっても、話し合いを早めにまとめ、遺産分割を成立させておくことは、家族全体にとっての備えになります。今の段階でどこまで進んでいるのかを、一度確認しておくとよいでしょう。

ご相談にあたって

当事務所の相続登記・相続手続きのご相談は無料で、着手金もいただいていません。ご依頼の際は、司法書士報酬のほかに登録免許税・戸籍等取得費などの実費が別途必要です。

遺産分割に争いがある場合の代理交渉・調停・訴訟は弁護士、相続税の申告・税務相談は税理士の業務領域です。当事務所は司法書士事務所として、相続登記・法定相続情報一覧図の取得・相続放棄の申述書など裁判所提出書類の作成等に対応し、必要に応じて適切な専門家をご案内します。

必要な手続き・書類・費用は個別の事情により異なります。ご自身のケースの見通しは無料相談でご確認ください。